■ 50人規模から必要と聞く
【問】
当社は従業員の増加によって産業医を選任することが必要になったと聞きました。
産業医の選任方法、その職務等についてご教授ください。
● 健康管理の研修修了を・・・法人代表者らは対象外
【答】
産業医は、事業場において労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導し、助言等を行います。
産業医の職務について、過重労働による健康障害防止対策、メンタルヘルス対策等が重要な課題となるなど状況の変化に対応してより効率的かつ効果的な職務の実施が求められていることから産業医の作業場等の巡視等の規定の改正 が行われ、本年6月1日から施行されています。
以下にお話の産業医の選任、その職務等の主な事項についてご説明します。
1 産業医の選任について
事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」といいます)を行わせなければなりません。
この政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とされています(安衛法13条、安衛令5条)。
事業者は、産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければならないこととされており、法人の代表者や個人事業を営む者または事業場においてその事業の実施を総括管理する者以外の者のうちから選任しなければなりません。
また、常時3,000人を超える労働者を使用する事業場にあっては、2人以上の産業医を選任しなければなりません。
常時1,000人以上の労働者を使用する事業場または次の表に掲げる業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場にあっては、その事業場に専属の産業医を選任しなければなりません(安衛則13条1項、下表)。
産業医は、安衛法13条1項に規定する労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければなりません(安衛法13条2項)。
この厚生労働省令で定める要件を備えた者として、
@ 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣の指定する者(法人に限ります)が行うものを修了した者、
A 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であって厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であって、その大学が行う実習を履修したもの、
B 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの等
が定められています(安衛則14条2項)。
産業医は法人の代表者や個人事業を営む者または事業場においてその事業の実施を総括管理する者以外の者のうちから選任することとされているのは、法人の代表者や個人事業を営む者または事業場においてその事業の実施を総括管理する者が産業医を兼務した場合には、労働者の健康管理と事業経営上の利益が一致しない場合が想定され、産業医としての職務が適切に遂行されないおそれがあるからです。
表 専属の産業医を選任すべき業務
イ) 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務 ロ) 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務 ハ) ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務 ニ) 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務 ホ) 異常気圧下における業務 ヘ) さく岩機、鋲(びょう)打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務 ト) 重量物の取扱い等重激な業務 チ) ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務 リ) 坑内における業務 ヌ) 深夜業を含む業務 ル) 水銀、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふっ)化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ。石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務 ヲ) 鉛、水銀、クロム、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふっ)化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸。一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務 ワ) 病原体によって汚染のおそれが著しい業務 カ) その他厚生労働大臣が定める業務 |