■ 月で異なる所定労働日
【問】
時給で働いていますが、月の所定労働日はまちまちです。
先日、給与明細をみた際に、年次有給休暇を取得した日の賃金を時間換算すると最低賃金を下回っていました。
違法なのかどうか分かりませんが、なぜこのようなことが発生してしまったのでしょうか。
● 平均賃金は暦日ベース・・・歩合給部分も対象に
【答】
給与明細で別々に記載されているというのは、年休を手当等として、「基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額」を記載した計算書を交付(平10.09.10基発530号など)しているということでしょう。
労基法39条7項では、年休に対して、以下の3つの賃金の支払いを認めています。
@ 平均賃金
A 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
B 健康保険法に定める金額
いずれにするかは就業規則等(Bは労使協定も必要)で決めておく必要があります。
Aについて、時給であれば、その日の所定労働時間分か支払われます。
仮に基本給部分に加えて増産手当や生産奨励手当などいわゆる歩合給部分がある場合でも、当該賃金算定期間における総労働時間で除した金額に、当該賃金算定期間における「1日の平均所定労働時間」を乗じて求めることになります(労基則25条1項6号)。
時給は、その日の所定労働時間数であるのに対し、歩合給の場合は平均で決まります。
Bはレアケースですが検討してみましょう。
社会保険に加入しているとして、健康保険料は、報酬月額に基づく等級ごとにベースが決まります。
例えば146,000円から155,000円であれば、15万円(12級)といった具合です。この額を30分の1した額が1日当たりの額です。例でいうと5,000円になります。
報酬額、1日の所定労働時間の組合せによっては、最低賃金を下回る可能性がありそうです。
@は、3ヵ月の賃金総額をその期間の総暦日数で除した額(労基法12条)が原則です。こちらは、割増賃金等も考慮しなければならないのに対し、Aは所定労働時間に応じて支払われる賃金のイメージです。
所定労働時間労働した場合に支払われる賃金の計算方法について労基則25条によれば、Aを所定内のものとしているのに対し、@は、賃金総額がベースとなるため割増賃金なども考慮しなければなりません。
@には、原則で計算した額と最低保障額を比較する仕組みがあります。
実労働日数が少ない人は、3ヵ月の総暦日数で除してしまうと、1日当たりの額が低く抑えられてしまいます。
そこで、賃金総額を「その期間中に労働した日数で除した金額の6割」を算出します。
年休を取得した日にいくら支払うかは労基法上の計算であれば足り、結果として最低賃金を下回る可能性はあります。 |